「学費滞納4億5955万円」
今朝の毎日新聞の一面記事に載っていました。
全国の都道府県立高校で06年度の授業料・入学金の滞納が総額4億5955万円に上ることが毎日新聞の調査で分かった。(大阪府が最も多く2億2921万円)督促強化や条例・規則改正で出席停止・退学の措置をとれるようにするなど対策強化に乗り出した自治体も多い。調査では、入学金を滞納している都道府県は、4府県(大阪、埼玉、岐阜、富山)だけだった。
余談ですが、文部省の発表している調査結果では、滞納、退学率の多いのは、学力が低い学校に多いという結果報告もあります。
この記事は、専門学校だけでなく短大、大学でも興味深い内容です。というのは、他人事では無くなってきているからです。
私学においては、
入学金、学費の収益で学校経営が成り立っています。この収益が
学費滞納という行為で減ってしまったら、いろんな弊害がでてきます。
また、学校の収益という観点からだけでなく、学校という教育現場で社会ルールを守らない者を野放しにしておくと、
学校のモラル低下や、
校則の権威がなくなることにもつながってしまいます。
もちろん、
学費滞納には学生個人やその家庭の経済状況など様々な問題があることでしょう。それでも、育英会などの
奨学金制度を利用することもできます。おそらく、経済状況が良くない家庭の場合は奨学金を利用していることの方が多いはずです。それなのに、入学金や学費を滞納しているのが実体です。
この理由で多いのは、
「自分だけでない。」という理由なのです。
これは、初めにご紹介した記事を詳しく読むと、
滞納者が多いのは一部の都道府県(大阪府では全体の滞納額の半分)に偏っているという事実から判断できます。反対に滞納者が少ない都道府県(秋田、石川、京都、愛媛、長崎、熊本、大分、沖縄)では、
滞納が0といことからも分かります。
やはりと思ってしまうのですが、この
「自分だけでない。」「周りもやっている。」という人間心理が、このような結果を招いているのです。
ですから、学費滞納を無くすには、減らす努力ではなく
「滞納0」にしないといけないということでしょう。
下手に善良人ぶって、
「学生が可愛そう。」というのは誰でもできますが、最後までその学生の経済上の面倒まで出来ないのがふつうです。
最初、
入学金の滞納を認めてしまうと、その学生(学生の保護者)は、その後の学費納付に関しても、困ると又、
「学校が学費の納付を待ってくれる。」と思ってしまいます。そうなると、悪循環になります。
学校が
特例で学生一人を助けると、次から次へと他の者も認めないといけなくなります。特例を出したその時から、特例は特例でなくなります。学校の
秩序や
威信は、とたんに崩れていきます。
校則が無視されると、他の真面目に校則を守っている学生からは、
「いい加減な学校」というレッテルを貼られ、学校に対する不満も増えていきます。
ですから、たとえ学生1人の入学金や学費の滞納を許す行為が、これほど大きなリスクを負うということを想定していないと、後々、取り返しのつかないことになってしまいます。
では、反対に学校が、
「徹底的に学費滞納を許さない。」という行動をとったとしたなら、どんなリスクが予想されるでしょう?
1つは、単純に
「入学金を準備できない学生」が入学してこないので、その分、入学者が減るのでは?という不安がでてきます。
もちろん、そのような
「入学金を準備できない学生」は、減りますが、そのことと入学者の増減は別の問題です。
入学者を集めることは、正しい募集戦略とそれを効果的に実行したことで、成果が上がるからです。
他の努力をしないで、「入学金を準備できない学生」を多く集めたいのであれば、規則を甘くすることも必要だということでしょう。
2つ目の
リスクは、
「学費滞納者の進学を認めない」ということを実行することで考えられることは
、「留年するなら退学しよう。」という学生が増えて、結果的に学生数が減る(収益も減る)のではという
不安でしょう。
しかし、これも、学校側の勝手な
思い込みであって、実際、それを徹底的に実行すると、ほとんど(他から学費を用立てられる)の学生は期限どおり納入します。
これは、以前、私が勤めていた専門学校でのことなのですが、進学時の学費滞納を許してしまい、かなりの人数の学生が
滞納のまま2年次に
進級していました。そのまま卒業を迎えると、卒業時には1年次と2年次の学費がたまっているのですから、進級時の時よりもはるかに大変なはずです。
ところが、その学校では
卒業時の滞納は一切認めていませんでしたので、毎年、そんな状況にも関わらず、ほとんどが学費の未納分をきちんと納付して
卒業式に間に合っているのでした。
しかし、学生(保護者)にすれば、このように卒業前にまとめて大きな金額を準備するよりも分割して、支払っている方が楽にちがいありません。
当の本人も分かっているのですが、
「先伸ばしの心理」や、進級・卒業できない場合に学費未納のまま退学したほうが得だという
「駆け引き」があるからなのです。
この場合、学生(保護者)には、
「ふつうに真面目にやっていれば進級や卒業できる。」ことをきちんと説明してあげることが必要です。その上で、
「進級・卒業の条件で不足しているのは学費だけ」なのだということを言ってあげると、
「何をすることが得策か?」は、誰でも理解できます。
3つ目のリスクは、
「厳しすぎるのでは?」というのがありますが、これは、厳しくすることで学校への
反抗など
トラブルが増えるのではとの不安からです。
確かに、そのことで、
「この学校は厳しい。」と思われますが、それがそのまま学校への反抗やトラブルへと繋がることはありません。
どうしてかと申しますと、学生が学校への反抗心を持つ、学校(教師)とトラブルになるというのは、
「規則を守る」ということと
別の問題であるからです。そのような問題が起きるのは、ほとんどが、はじめに教師と学生の
コミュニケーションがとれていない、学校が
学生を理解していないことから起きているがからです。
ですから、規則を厳しくすることで
入学者が減る、退学者が増えるという
不安リスクよりも、学内や学外から「規則が徹底したきちんとした学校」という良いイメージを持たれる
メリットの方が多くなります。
このようなことを書くと、単純に
「学生に督促を出す」という教職員がでてきますが、これは、
学校を尊厳あるものにしたいならば、してはいけない行為です。
なぜなら、学校は企業ではありません。また、社会でもありません
。「学校は、企業や社会に送り出すために学生を養成している教育機関」です。
いくら社会通念で督促行為が認められていても、教育の場で
「学生に督促を出す」ことは、学生(保護者)への配慮に欠けます。
教育現場で督促行為を行なってしまうと、学生(保護者)や世間からは、
「金儲け主義の学校」というレッテルを貼られます。
こんなレッテルが一度でも貼られてしまうと、後からどんなに努力しても、その学校にはブランドや威信からはほど遠い
「金儲け主義の学校」になるのです。
では、どうすれば、学校は督促もしないで学費滞納を減らすことが出来るでしょう。
先ずは、
入学時に徹底的に規則を守らせることです。そのためには、
学校説明会の場や学生(保護者)からの
問合せの時に、はっきりと規則について説明してあげることが大事なことです。ここで、あやふやな表現で答えてしまうと、トラブルを生むことになりますので気をつけてください。
どこの学校でも、入学後直ぐには校則を学生に配布し、その説明も丁寧にします。ところが、ほとんどの学校では、その後、そのような機会がないのです。
もちろん、時間がとれないという理由がありますが、一度の説明で頭に入っている学生の方が少ないのが現状です。
それに、卒業までに校則を見直す学生が、どれくらいいることでしょう? 余程の理由がない限り、ほとんどが見ないことでしょう。
ですから、一度だけの説明や校則を渡しただけでは、
「学費滞納を無くす」ことにはつながりません。
本気で
「学費滞納を無くす」のであれば、本気でそのことに取り組まないといけません。
そのためには、時間をつくり、
校則(学費納付)説明の機会を数回設ける、また、
保護者へも同じように「学費納付」についての案内を定期的に送るべきです。これは、入学後直ぐに続けて行なわないと、進級前や卒業前では意味がありません。
「学費納付」の説明する手紙に関しても、「学費納付」のことだけに集中して書く必要があります。そのようにしないと、学校が何を言いたいのか伝わらないからです。
また、手紙の内容では、
相手の立場を配慮していることも重要なことです。それによって、学校の立場も理解してもらえることになるのです。
最後までお読みいただき有難うございました。
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